~ED(勃起不全)について~
ED(勃起不全)は、どうすれば治るのでしょうか?
ED(勃起不全)の治療薬には「ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬」が使用されます。PDE5とは血管を拡張させる役割を持つcGMP(環状グアノシン一リン酸)を分解する酵素のことで、海綿体にも存在しています。そのため、PDE5を阻害し、cGMPを増やすことで海綿体の血管が拡張し、勃起がしやすくなります。
PDE5阻害薬には「バイアグラ」「レビトラ」「シアリス」の3種類があります。いずれも、医師によって処方されるものであり、また、性行為の数時間前に服用しなければなりません。このように、PDE5阻害薬を服用することがEDの一般的な治療法です。
では、PDE5阻害薬の安全性についてはどうなのでしょうか?
もちろん、これらのED治療薬は国内で承認されており、深刻な副作用は見つかっていません。しかし、ED治療薬を服用することで軽度の副作用が現れる場合があるため、服用に関しては一定の注意が必要です。
例えば、Nature関連誌に掲載された論文である「人間の網膜細胞におけるPDE5酵素の分泌:PDE5阻害薬による、目に対する副反応の新たな側面(Expression of the PDE5 enzyme on human retinal tissue: new aspects of PDE5 inhibitors ocular side effects)」
においても、ED治療薬の副反応について言及されています。先述のように、PDE5阻害薬は海綿体のPDE5を阻害することで血管を拡張させると言われています。しかし、この論文によると、他の多くの器官にもPDE5は存在しているため、PDE5阻害薬の影響を受けるのは海綿体だけではありません。具体的には、肺血管、心臓血管、交感神経系、プルキンエ細胞においてもPDE5が存在しています。結果として、PDE5阻害薬投与によって体全体のPDE5が減少し、頭痛、顔のほてり、低血圧、消化不良、視覚障害などの副作用が生じてしまうのです。
他にも「PDE5阻害薬の有効性と安全性(The efficacy and safety of PDE5 inhibitors)」という論文においても、上記の副作用と、稀に勃起持続症が起こる可能性があると指摘されています。
また、ED治療薬の重大な欠陥は、それが対症療法であるために、治療薬を飲み続けなければならないという点にあります。ED治療薬を継続して飲み続けることで習慣的に勃起不全が起こりにくくなるとの報告もされていますが、ED治療薬が作用するのは海綿体だけではありません。PDE5阻害薬は、その他の血管や神経にも影響を及ぼしてしまうため、ED治療薬の長期的な服用は得策ではないと考えられます。ED治療薬の長期的な服用は、ED(勃起不全)の原因を放置したまま、表面的にED(勃起不全)を解決しているに過ぎません。
もし本当にED(勃起不全)を改善したいのならば、ED治療薬などの対症療法によって一時的にED(勃起不全)を解決するのではなく、根本的にED(勃起不全)を改善する必要があります。つまり、ED(勃起不全)が起こりにくい健康な体を作る必要があります。
ED(勃起不全)の症状が生活習慣によって大きく左右されることは現時点で分かっていて、「アメリカにおけるEDの有病率とリスク要因(Prevalence and Risk Factors for Erectile Dysfunction in the US)」という研究では、2126人の成人男性のデータを解析した結果、糖尿病や高血圧の男性にED(勃起不全)が多く見られたと報告されています。そのため、運動などの心臓血管病や糖尿病を予防する行動が、ED(勃起不全)の改善にも繋がると言われています。
それに加え、「EDとその要因についての疫学(The epidemiology of erectile dysfunction and its risk factors)」という論文においても、年齢だけでなく、糖尿病、血管疾患、肝不全、腎不全、腎透析がED(勃起不全)に関係していると報告されています。
さらに、健康状態はED(勃起不全)との相関が強く、その相関は年齢よりも強かったと言いわれています。要するに、ED(勃起不全)の原因としては、加齢よりも健康状態である可能性のほうが高いということです。
したがって、生活習慣を改善し、体質を改善することは、ED(勃起不全)の根本的な治療法であると言えるでしょう(その視点からサプリメントも選択すべきでしょう)。PDE5を抑制するような一時的な対処法ではなく、根本的な完治を目指していきましょう。
参考文献
Foresta, C., Caretta, N., Zuccarello, D., Poletti, A., Biagioli, A., Caretti, L., & Galan, A. (2008). Expression of the PDE5 enzyme on human retinal tissue: new aspects of PDE5 inhibitors ocular side effects. Eye, 22(1), 144-149.

Rashid, A. (2005). The efficacy and safety of PDE5 inhibitors. Clinical cornerstone, 7(1), 47-55.
Selvin, E., Burnett, A. L., & Platz, E. A. (2007). Prevalence and risk factors for erectile dysfunction in the US. The American journal of medicine, 120(2), 151-157.
Bortolotti, A., Parazzini, F., Colli, E., & Landoni, M. (1998). The epidemiology of erectile dysfunction and its risk factors. International journal of andrology, 20(6), 323-334.
